WHILL体験レポート
奈良公園において2021年11月6日〜11月14日の間実施された、WHILL(ウィル)を活用した公園利用者の周遊性向上を目指した移動支援サービスの実証実験に参加してきました!
前回実証実験
奈良公園では、2021年2月にWHILLを用いた周遊性向上を目指した実証実験が行われてました。こちらの実験後のアンケートでは、実験参加者の約9割が「快適性」 に満足であり、回遊性が向上すると回答したそうです。
こちらは閑散期に実施されたもので、多くの観光客が奈良に訪れる秋の行楽シーズンであればどうなるのかを確かめるべく実施されたのが今回私の参加した実証実験になります。観光客が多い秋の行楽シーズンで、WHILLを走らせることに不自由はないのか確かめてきました。
乗ってみたいと思っていた背景
前々からWHILLには乗ってみたいと思い続けていました。一番初めの出会いは楠田悦子氏と森口将之氏の『最新 図解で丸わかり MaaSがまるごとわかる本』の表紙右下にあるWHILLの絵を見て興味を持ったところです。
今までWHILLといえば電動車椅子というイメージが強かったのですが、自動運転とMaaSを融合して空港での実証実験を既に行なっていることを初めて知りました。ラストワンマイル問題を解決できるモビリティであり、高齢化社会に向かっている日本にもぴったり。自社でハードを開発している傍らプラットフォームを構築するソフト面での取り組みを続けているというところで、とても魅力的なモビリティだと思いました。
私は車も好きだし歩くのも好きで、WHILLから一番遠い場所にいる人間のように思うのですが、逆に将来車に乗れなくなったら・歩けなくなったらどれほど辛いだろうかと考えてしまいます。そんな中で将来WHILLが当たり前に街中を走るようになれば、体が不自由になったとしても心身共に外出のハードルは低くなり人生を楽しめるのではないかと思います。
今回は無料でWHILLを乗れる機会があるということで、奈良公園での実証実験に参加してきました!
WHILLとは
まず、WHILLとは何かお話ししたいと思います。WHILL株式会社は近距離移動のプラットフォームを作っている会社であり、パーソナルモビリティのWHILL model C や model F の開発、生産、販売、関連サービスの提供を行っています。これに加えてこのパーソナルモビリティ製品を使用した移動サービス(MaaS)の提供も行っており、この2軸で事業展開がなされています。WHILLのミッションは「すべての人の移動を楽しくスマートにする」であり、従来の車椅子のイメージを超えるスタイリッシュなデザインのモビリティを提案しています。
体験記
今回、私は友人と奈良観光も兼ねて奈良公園の周遊性向上を目指したWHILLの実証実験に参加してきました。もともとWHILLには乗ってみたいと思っていたのですが、なかなか乗る機会がなく、今回無料で体験できるということで奈良公園に行ってきました。あいにく小雨が降る11月の肌寒い日でしたが、紅葉狩りとWHILLを味わうことを目的に奈良公園内を周遊するコースを走行しました。
まず集合場所の奈良公園バスターミナルまで行き、操作方法の説明と軽い試運転を広間で行なってから奈良公園内に向けて出発しました。公園内の一時駐輪スペースまでは地下道や広めの歩道を通ります。舗装されているのでとてもスムーズに移動できます。滑らかな坂道を上り降りしますが、全くパワー不足な印象は受けません。一時駐輪スペースに一旦車両を置いて紅葉と鹿を見に行きました。
その後折り返し地点地なる二月堂までWHILLで登っていき、有名な東大寺へは徒歩で向かいました。一時駐輪スペースから二月堂までの道は舗装されていない場所も多々あり、結構な凸凹道でした。多少の段差は楽に乗り越えられるので、石が邪魔で進めないということはありませんが、乗り心地は決してよくありません。
↑伝わりづらいかと思いますが走行した砂利道です
二月堂付近までは階段とともにスロープが整備されているのでWHILLでも移動できますが、東大寺方面へは階段しかないので歩いて行かないといけません。公園内の周遊性をアップするならば、もう少しバリアフリーに配慮したスロープが増えていって欲しいなと感じました。
帰りは行きに通った道を辿って行きます。歩道が細く、すぐそばを車が走るところでは警備員の方に守っていただきながら走行していくことになりました。例えば奈良公園を自動運転のWHILLで周遊できるようになった場合、メリットの1つとなるのは人件費の削減だと思います。その点を考えると、至る所に警備員の方を配置するのは、実証実験だから実現したことかと思いますが、実際社会実装された時にはなるべく避けるべきことかと思いました。
以上が私の体験した内容になります。
行楽シーズンの奈良 修学旅行生からの視線
前回実験の閑散期は体験していませんが、総じて人は多いような印象を受けました。コロナ禍なので外国人観光客の姿は見えませんでしたが、国内では第5波が落ち着いた頃であり、大勢の日本人観光客がいました。予想外だったのは修学旅行生・校外学習生が沢山いたことです。
WHILLに乗っていると彼らとすれ違ったり、追い抜く場面が多々ありました。その中で印象的だったのは小学生たちが、「車椅子の人がいる」ではなく「見たことのない面白そうな乗り物に乗っている人がいる」という反応をしてくれたことです。スタイリッシュなデザインのWHILLは、健常者にも受け入れられこれからの世代を担う小学生たちからもこのような評価を受けているということを知れて、今後もっと広めていくべきものだと感じました。
実際乗ってみた操作感
乗ってみると、舗装されている歩道の走行は本当にスムーズに行うことができました。スロープなどの高低差も問題なく、横断歩道を渡る際の車道から歩道の段差もしっかり登ることができます。最高速度は6キロで、普通の歩行者より少し早いかな?くらいの感覚でした。コントローラーを最大まで倒した時の最高速度は自分で変更できるので、周囲の状況や一緒に歩く人のペースに合わせて調整することができます。
WHILLの特徴の一つとして、オムニホイールという24個の小さなタイヤの集まったタイヤが挙げられます。その小さなタイヤが回転することで、回転半径76センチでの回転が可能となっています。実際回転してみると、その場を滑っているような感覚でとても小回りが効くことがわかります。ぜひ一度体験していただければと思います。
↑オムニホイール
WHILLに乗るには
WHILLは各社ディーラーであったり、提携店舗にて試乗や購入をすることができます。レンタルも可能だそうです。一方で、購入するつもりはないけど一度乗ってみたいという方も多いかと思います。そんな方は、WHILLホームページの左下にある「試乗会のご案内」というところから最寄りの場所で行われている試乗会を探してみることをお勧めします。私もこの奈良での実証実験をここから見つけることができました。
また、無料で最先端のWHILLの技術に触れれる機会として羽田空港での「WHILL自動運転モビリティサービス」があります。こちらは羽田空港の国内線第1・第2ターミナル出発ゲートラウンジ全域で展開されており、搭乗ゲートまでWHILLに乗ることで自動で移動することができるようです。羽田空港は利用したことがないので、行った際にはぜひ利用してみたいと思います。予約不要・無料です。
健常者がWHILLを利用する
電動車椅子といえば足腰の不自由な方が利用するイメージが強いかと思いますが、WHILLのミッションは「すべての人の移動を楽しくスマートにする」です。事業サービスの片軸として「パーソナルモビリティ製品を使用した移動サービス(MaaS)の提供」を挙げているように、ラストワンマイルを担おうとしています。別に駅から駅の乗り換えぐらい歩けるぞと思う方は多いと思いますが、それが大きなハードルとなり外出が億劫になっている高齢者は沢山いると思います。実際私の祖母も病気をして歩くのがしんどくなってから外出の頻度は下がっているし、どこか生活にハリがなかったり元気がないように感じてしますいます。頭は冴えていても歩くのがしんどいから外出を控えるという人は、今後日本の高齢化が進行していく中でもっともっと増えていくのではないかと思います。
我々学生や両親の世代でも街を歩いていて坂道がしんどいと感じたり、初めて行った街で道がわからなくなったという経験をした方も多いと思います。京都の烏丸や河原町といった市街地から清水寺まで行こうとすると坂道かつなかなかの距離がありますし、神戸でも海岸側から北野異人館街の方面へ向かうとなると坂道がしんどいです。(関西以外にもあるはず)駅から遠かったり高低差があったりするところで、WHILLの支援があればより多くの人が快適に移動して活動できるのではないかと思います。
坂道の上と下の移動支援でこうしたモビリティをシェアリングで置く場合、上の方に車両が偏ってしまうのではないかという懸念点があると思います。そこでダイナミックプライシングを用いて人々の利用を喚起していけば、最適な価格になった時、人の手を借りないで車両を分配することができるのではないかなと想像しています。
電動車椅子に乗ったからといって歩けなくなるわけではない。
歩けるのに車椅子に乗ると筋力が衰えて歩けなくなるのではないかと考える方は多いのではないかと思います。私もそう考えていました。しかし、リンクを貼ったWHILLのコラム「車椅子に乗ると歩けなくなるは嘘⁉︎ QOL向上のために賢く使う」という記事をぜひ読んでみてください。大事をとって家にいる方が歩けなくなる可能性が高まってしまうことがわかります。このコラムの情報やその中の参照情報なども一度読んでいただき、間違ったイメージだけで敬遠するのはやめて欲しいと思いました。
まとめ
今回は奈良で行われたWHILLの実証実験の感想などを執筆しました!近距離移動のプラットフォーマーになろうとしているWHILL。「すべての人の移動を楽しくスマートにする」というミッションのもと、今後様々な取り組みを続けていかれることかと思います。実証実験やサービス提供地点の範囲が広がれば、今後私たちの目に入る機会は増えていくのではないかと思いました。奈良の修学旅行生がしてくれた反応のように、面白くて格好いいモビリティが走る街に日本がなっていけばいいなと思います。
このブログではMaaSに関する実証実験の体験レポートを掲載しています。群馬県前橋市でのMaeMaaSやJR西日本のWESTER、トヨタのmy routeなどストックが沢山あるので頑張って投稿していきます!ぜひまたお読みいただけると幸いです。ここまでお読みいただきありがとうございました!
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